洒落怖Part133より「和菓子屋の取材」
私は編集者をしており、イベントやお店の紹介記事を書くなどしています。
こちらから掲載をお願いすることもあれば、読者からの情報を参考にしたり、あとはお店からの葉書やFAX、電話などで掲載依頼が来ることもあります。
なにをどう選ぶかの基準は、正直なところフィーリングです。なんとなく楽しそうだな、面白いなと思ったら取材をして記事にしています。
ある日のことです。締め切り明けだったので、同僚たちは夜の街に消えていったり、得意回りをしたりと、おのおの姿を消し、編集室の中は私だけになっていました。
一仕事おわったあとの軽い気持ちで、なにかいいネタがないかなーと葉書をあさっていたところ、ひときわ目立つものがありました。
一枚の写真と便せんでした。写真にはいかにも老舗という印象の古いお店が写っていました。
便せんは全体的に古びていました。書面を見ると、まるでインクが乾く途中で文字を擦ってしまったような、とにかく汚い字でした。
書面には「おいしいですよ ぜひ来てください」とのみ書いてありました。…
