洒落怖Part69より「ゆき」
「昔、明治のころ、この島の北の漁港のあたりにな、ゆきっていう名前の娘が住んでいたんだと。父親は漁師で、母親はゆきが小さいころに海で溺れ死んでいた。
ゆきは飴売りをしながら父の仕事を手伝う働き者だったが、十八のときに重い胸の病にかかってしまった。
医者に助からないと言われ、嫁入り間近だったゆきは一方的に破談を言い渡され、ついに発狂してしまった。
発狂したゆきは一日中わけのわからないことをぶつぶついいながら徘徊するようになった。
哀れに思っていた周囲の人々も次第に気味が悪くなって、父親に辛く当たるようになった。
父が漁に出ているあいだは娘の面倒を見てやれない。療養所に入れる金もない。父親も途方に暮れた。
そんなある日の晩、ゆきは姿を消した」
「次の日、漁師仲間が前の晩に父の船に乗って海に出て行くゆきを見たと言う。
『月の明るい晩じゃったけ、横顔がはっきり見えたよ』
なぜ止めてくれんなんだ、と言う父に漁師仲間は『もうひとり乗っとったが、あれはお前さんじゃなかったのか』。
騒然となり、漁師仲間も手伝って探すことになった。
やがて漁に出ていた仲間の知らせで、沖の方でゆきの乗った船が見つかったという。
曳航されてきた船にはゆきの変わり果てた姿が転がっていた。ゆきは一人であったが、おそらくゆきを連れ出した誰かがやったのだろうと言われた。
その者は、ゆきと心中しようと沖に出たのか、あるいは争って海に落ちたかのか。いずれにせよ生きてはいまい。
そんな所に話は落ち着いたが、内心誰もが思っていた。
『人の仕業ではない』と。
ゆきの首はもがれていた。
…それ以来yきはyきhわたしはhhじゃのいうとおりhhじゃのまつうなばらへ出た。凪いだうみに手がのぼってきた。とてもとても深いうみぞこからの白い手が幾ほんものぼってきた…」