洒落怖Part78-2より「地元に伝わってる歌」

やれ音吉や 下本郷

これが泣かずにおられようか


昔、下本郷という村に音吉という女がいた。音吉は島の男のところに嫁いだが、島の暮らしに馴染めなかった。打ち寄せる波の音を繰り返し聞くにつれ、下本郷に帰りたいという思いが強くなっていった。

ある夜のこと、音吉はとうとう島から村に帰ることを決めた。音吉は泳ぎが達者だった。泳いで帰るのはそう難しくなかった。

海は鏡のようで、音吉は造作なく泳ぐことができた。あと少しと言うところに中州を見つけ、そこに身を横たえた。

どれくらい休んだか。そろそろと思い体を起こすと、向こうに船の灯りが見えた。…

洒落怖Part78-2 - 地元に伝わってる歌