洒落怖Part300より「前倒し」


弟の友人の話だ。

友人の実家は田舎にある古く大きな家で、家にまつわる奇妙な話も幾つかあったそうだ。

ある夜のこと、家族みなで一階にいると、電話がかかってきた。
父の友人からの電話だった。今夜これから訪ねに行くという。

この人は、一人旅が好きな人で、しょっちゅう海外に出かけてはときどきふらりと帰ってきて、
土産話を肴に一杯というのを恒例にしていた。

今回はカンボジアだったかベトナムだったかから帰ってきたから、今からその足でうちに寄る、ということだった。
父も父の友人も、時間を気にしない人だったので、これからすぐにやって来るといっても別に気にしていなかった。

私たち子供や、妻は待っていても仕方がないというので、二階の寝室にさっさと入ってしまった。
父は一階の応接間に酒などを持ち込んで、友人を待っていた。

私はさっさと寝てしまったから気が付かなかったけれど、母によれば、
気が付いたら父が人と話している声が聞こえてきたので、ああ、来たのだなと思ったのだそうである。…

洒落怖Part300 - 前倒し