洒落怖Part192より「祠の中」


小学生のころ。両親が離婚するのに裁判をするということで、夏休みのあいだ、母方の実家に預けられることになった。

実家の周辺は大した田舎だった。山と田んぼしかなかった。

自然が豊かなせいで昆虫採集が楽しめたので、わりと楽しく遊んでいた。

あちこちを歩き回ったのだが、祖父から「行ってはならない」と固く禁じられている場所があった。山あいにある防空壕である。

行ってはいけないと言われると、行きたくなるのが人情というものだ。ある日、こっそりとその防空壕に行ってみた。

防空壕の入り口は、人ひとりがようやく入れるくらいの大きさだった。相撲取りの化粧まわしのようなものが入り口にかかげられていた。

中に入ってみると、中の空気はひんやりとしていた。寒いくらいだった。

中は真っ暗だった。奥行きがどこまであるのか知れなかった。風が反響して不気味な音を立てていた。

怖くなったのですぐに引き返して家に帰った。…

洒落怖Part192 - 祠の中