洒落怖まとめ 山怖 Part58より「魅入られる」


花見の席で、上司のAさんに聞いた話。

学生の頃、Aさんは吹奏楽部に所属していた。

山あいの小さな村にある学校だった為、敷地は狭く、部員は、裏山の山頂の休憩所のような所で練習をしていたそうだ。

そこは桜の名所で3月の終わりともなれば提灯が飾られ、花見客でそれなりに賑わう。

Aさんは一番の親友で、部活仲間のBと、咲き始めた桜を見ながら、また数日間は練習が難しくなると話していた。

するとBは学校が始まる前に練習することを持ちかけてきた。朝が弱いAさんは気乗りしなかったがBのやる気に押され、次の日Bと朝練をする約束をした。

次の日、案の定遅刻してしまったAさんが「すまーん。」と叫びながら山頂に来ると、Bが、ボーっとトランペットを抱えたまま座っているのが見えた。

「何してるんだ?」と問いかけると、「すごい美人を見た。」と半ば上の空で話した。

Bが一人で練習をしていると、艶やかな着物を着た、透き通るような白い肌の美人が桜の木々の間からこちらを見ているのに気づいたという。

女性がにっこりと微笑みかけ、誘うように手をのべる。Bが話しかけようとした時に、Aさんが来たらしい。 はっきりと見えた筈のその姿は急に見えなくなったという。…

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