洒落怖Part202より「泥」
当時、私は中学三年生で、部活に明け暮れる日々をおくっていました。
私の実家の周辺は一面に田んぼが広がり、見るべきところなどどこにもないという有様です。街灯もぽつりぽつりと間を開けて設置されているばかりであり、夜になると人通りなど皆無なのです。
その夜は、部活で帰りが遅くなりました。自転車を走らせ、家まであと二〜三分というところのこと。
行く手にある田んぼから、何かが這い出してくるような気配がありました。折しも、田植えをしたばかりで田んぼに水が張られている時季。その何かは、ぼとりぼとりと泥を落としながら水田から這い出してきたのです。…